死ぬことにした
生きる気力を無くしたので
でもせっかくなら
美しく死にたいので
東尋坊から飛び降りることにしました
◆出発◆
東尋坊
かの有名な自殺の名所
眺めが綺麗なので
今では観光地化されているそう
ちょうどいい
素敵な最期だ
時刻は昼12時
東京から福井まで
距離480kmを原付で
恐らく丸一日かかる
「まあ、いいか」
思い立ち
即着替えて
即出発できた
時刻まだ12時
不思議なもので
その日の僕はボロボロで
その日以前もボロボロで
ご飯どころか水を飲む気力すら無かった
放っといても死んでいたかも
でも
なぜか
東尋坊へ向かった
原付で
…なぜ?
新幹線は?
金が無い
タクシーは?
論外
夜行バスは?
まだ昼
夜まで待とうぜ?
やだ
待てない
今すぐ行く
手持ちの金は?
現金数百円
そろそろ限度額のクレカ
PayPay数千円
ホントに行くの?
当たり前
仕事は?
しない
やらない
もう終わり
信用無くすぞ?
もういい
元から無い
どうなってもしらん
正気?
なわけないだろ
明らかに無意味な旅
今の僕にあるのは
死への憧れのみ
無意味だった人生など
全部捨ててしまおう
何も無い
何も見えない
何も聞こえない
何も感じない
何もかもどうでもいい
所詮独りだ
無価値な執念のみが
僕を突き動かした
◆道中◆
色んなことがあった
ブログ記事にする気は無かったので
いちいちまとめてないのだが
じゃあなんで記事書いてるの?
知らん
…気の迷い?
どうせだから好きにやる
もうまともじゃないんだ僕は
埼玉に入った時は
気分が上がったなあ
これからこんな感じの気分が
ずっと続くと思っていたっけ
でもそこからが
もうしっちゃかめっちゃかに長かった
山を何個超えたか覚えてないし
トンネルを何個くぐったかも覚えてない
↑これは拾い画
でもトンネルは途中から
見る度テンションが上がったな
中は暖かい
夜は外より明るいし
屋根のおかげで雨避けになるし
そう、雨
雨ヤバかった
特に深夜
こんなカーブを上り下り
土砂降りの雨の中
ド深夜に
しかも街灯無し
志半ばで死ぬかと思った
そんで
そんなカーブを抜けた先の
山の家はガチで有難かったなあ
時刻は深夜1時
眠気もあったので
2時間ほど中のベンチで眠って
(一人先客がいました笑)
で、出発するときに買った
自販機のコーンスープが美味いのなんの!
暖かさと甘さが沁みる…
そんなこんなで
山越え谷超え(比喩ではない)
日が昇ったころに見えてきたのは
マクドナルド!
文明が帰ってきた!
まさかマクドナルドに
ここまで感動するとは
思わず朝マックを注文しました
充実した良い朝食だった…
とまあ、そんなこんなしているうちに
もうほぼ真っ直ぐ進むだけになり…
ついに…
到着
◆到着、そして◆
時刻は午前11時30分
おおよそ丸一日
道中の雨が嘘のように
ピカピカの快晴
やっとの思いでたどり着いた
待ち望んだ東尋坊
「目的地に到着しました」
ナビの声が聞こえた時
僕は笑ってしまった
おいおい、
480kmだぞ⁉
丸一日だぞ⁉
原付だぞ⁉
雨の中だぞ⁉
マジでやっちゃったのか
昨日まで全く動けなかったのに
死への憧れだけで
その原動力だけで
ここまで来れてしまったか
そんなにも僕は
死にたかったのか
自分の言動に愕然とする自分
しかし、こんなものは
すぐにどうでも良くなった
憧れの東尋坊に到着して
目の前に広がる光景に僕は…
…なんだこれ
僕の目の前に広がっていたのは
大学生時代にも目にした
サークル旅行のそれだった
観光客でごった返し
キャンキャン騒ぐ子供
オーバーリアクションの男子学生
映えを狙う女子たち
あるもので何とか現地っぽさを表現する
お土産屋
カフェ
レストラン
自殺の名所のイメージはどこへやら
きれいさっぱり消し去られ
どこを探してもまるでない
なんだこれ
どこにでもある
観光地じゃんか!
極めつけはこれ!
岩場サンデー!
なんだそりゃ⁉
百歩譲って黒っぽい色ならわかる
でもこれの色はなんだ
なんでこんなキュートでカラフルでポップなんだよ!!!
…ああそうか
間違ってるのは
僕の方か
こんなものが待ち望んだ世界かと思ったが違う
最初からこんな場所だったんだ
僕が場違いなんだ
僕はこの世界にいてはいけないんだ
僕は死に場所にすら見捨てられたのだ
いつもそう
間違ってるのは僕の方
正しくないのは僕の方
自分が正しかったことなど
タダの一度も無かったではないか
お前また性懲りもなく
自分が正しいと
思ったのか?
…せめてこんな時に
ビールの一本でも飲み干せる
そんな胆力があれば
まだ生きやすかっただろうに
失意の中、なんと自宅に帰ろうとしている
なにを今更
全て捨てた後だというのに
どの面下げて帰れと言うのか
間違ったやり方でここに来て
間違った希望をここに向けて
勝手に落ち込んで
勝手に絶望している
もう終わりだこのゴミ人間
時刻は間もなく午後3時
未だ東尋坊にいる
生きる気力はまだ湧かない
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